京都大学・再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、新型の「万能細胞」(人工多能性幹細胞=iPS細胞)を人の皮膚細胞から作ることに世界で初めて成功した。
21日、米科学誌セル(電子版)に論文を発表する。
米ウィスコンシン大学も同様の万能細胞を開発することに成功。
同日、米科学誌サイエンス(電子版)に発表する。
[「万能細胞研究を巡る日米競争」を英会話のトピックとして]
昨年、京大チームがマウスの細胞でiPS細胞を作製して以来、世界中の研究者が人の細胞での成功を目指して激しく競っていた。
<英語記事:マウスでのiPS細胞作製>
人の体細胞から万能細胞ができたことは、次世代医療である再生医療の本格的な実現に向けて大きく踏み出す成果だ。
再生医療は特殊な細胞を培養して移植用組織を作り、病気やけがを治療する先端医療だ。
《「再生医療の現状」に関して英語論説》
培養する細胞として、体の様々な組織や臓器の細胞へと成長する能力を持つ万能細胞などが使われるが、万能細胞は研究段階にある。
代表的な万能細胞は胚性幹細胞(ES細胞)で、人では1998年に初めて作製された。
生命の萌芽である受精卵を壊さないと作れないため、生命倫理の立場から反発が根強く、米ブッシュ政権は連邦予算を使ったES細胞研究を制限している。
[「ES細胞の倫理的な壁」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
また、他人の受精卵を使って作るため、移植する場合に拒絶反応が避けられない。
同じ遺伝子を持つ生物を作り出すことのできるクローン技術をES細胞に応用した「クローンES細胞」というのもある。
患者と同じ遺伝子のES細胞が作れるため、拒絶反応は回避できる。
ただ、大量の卵子の提供が必要とされ、人の細胞ではまだ成功していない。
《「クローンES研究を巡る論文捏造事件」について英語記事》
今回、京大チームが作製したのは「iPS細胞」。
成人の皮膚細胞にマウスの場合と同じ4種類の遺伝子を組み込み、培養期間を約1カ月に延ばしたり、増殖因子を替えたりして、人間のiPS細胞を作るのに成功した。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
その後、神経や心筋など約10種類の細胞に分化できることも確認した。
iPS細胞は受精卵などを使わないのでES細胞などよりも倫理的なハードルが低い。
また、患者本人の細胞から移植用組織を作れば、移植しても拒絶反応が起きない。
《「iPS細胞の利点」について英会話》
今回の成功で、今後は、iPS細胞を中心に再生医療の研究が展開していくとの見方が強まっている。
ただ、患者への臨床応用には技術的な課題もある。
京大チームがiPS細胞を作るのに皮膚細胞に組み込んだ遺伝子の1種類は発がんとの関連が指摘されている。
遺伝子導入時に使ったウイルスもガン化を促す恐れがある。
作製方法を改良し安全性を向上させる必要がある。
<英語にて解説:作製方法改良の見通し>
国はiPS細胞の研究ルール作りのための議論を早急に始めるべきだ。
iPS細胞からは精子や卵子といった生殖細胞を作ることも理論上は可能だ。
生殖補助医療への応用の可能性が広がる一方、新たな生命倫理の問題が生まれてくる可能性もある。
《「iPS細胞の可能性と課題」に関して英会話/ディスカッション》
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