中国人民銀行(中央銀行)は21日、人民元の為替レートを対ドルで2%切り上げると発表した。
同時に、米ドルのみに連動させてきた事実上の固定相場制を改め、複数通貨の動向を参考に調整する「通貨バスケット制」に切り替える。
《「人民元相場の推移」について英語にて解説》
同日午後7時、人民元の対ドルレートを1ドル=8.11元と設定。
22日からは上下0.3%の範囲内で変動させる。
中国の為替制度は94年に管理変動相場制に移行。
制度上、人民元レートは上下0.3%で変動できたが、実際には人民銀行が為替市場に介入し、対ドルの為替水準をほぼ一定に保ってきた。
<英語論説:中国の為替政策>
アジア通貨危機を機に97年ごろからは、1ドル=8.27〜8.28元の狭い範囲に固定された。
通貨バスケット制は、複数の通貨のレートを一定の比率で加重平均したものに自国通貨を連動させる方式だ。
ドルに対する上下0.3%の変動幅をそのまま放置すれば、計算上は人民元レートが3カ月で20%以上切り上がることもありうるが、バスケット制を採用することで極端な変動を抑えることができる。
《「バスケット制採用の効果」に関して英会話/ディスカッション》
人民銀行は通貨バスケットの構成通貨について明らかにしていないが、ドル以外に円、ユーロ、英ドルなどを含むもようだ。
ただ、実際には貿易決済通貨の大半をドルが占めるため、バスケット制導入後も人民元とドルとの連動性が高くなるとみられる。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
市場などが事前に予想していた切り上げ幅は3〜5%だった。
対ドルで2%という小幅の切り上げは国内の輸出企業の業績悪化や農産物の輸入拡大を懸念してのことだ。
今回の措置が中国の実体経済に直ちに与える影響は小さいとの見方が強い。
[「元切り上げの中国経済への影響」を英会話のトピックとして]
切り上げに踏み切った中国自身の事情としては外貨準備の急増がある。
中国の外国為替市場には元切り上げを見込んだ投機資金の流入が続いている。
人民元の上昇を食い止める「ドル買い人民元売り」の介入で、中国の外貨準備は今年6月までで7110億ドルに達した。
国内の通貨供給量が膨張し、景気過熱の一因となっていた。
《「中国の景気過熱」について英語記事》
中国当局がこのタイミングで決断したのは、9月に胡錦濤国家主席の訪米を控え、対中貿易赤字の増大を背景に為替制度の見直しを強く求めていた米国に対する政治的配慮もあるとみられる。
<英語にて解説:米国の対中貿易赤字>
米国では4月以降、安価な中国製品の輸入急増に悲鳴を上げる産業界からの突き上げもあって、上下両院で中国製品に報復関税を課す制裁法案が相次いで提出された。
《「米国による中国たたき」について英会話》
対中強硬姿勢に転じた米政府は5月中旬、中国に今秋までの人民元改革を求め、応じない場合には制裁措置の発動も辞さないと警告した。
ブッシュ政権は中国政府の今回の元切り上げに一定の評価を示している。
ただ、小幅な切り上げにとどまったことに産業界や議会には不満が残っており、今回の措置で対中批判が収まる可能性は低い。
[「元切り上げの米中関係への影響」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
米政府は人民元の一段の切り上げを要請する見通しだ。
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