29日、イスラエルのシャロン首相はパレスチナ自治政府のアラファト議長を「敵」と宣言した。
<英語にて解説:最近のパレスチナをめぐる動き>
同日未明にはイスラエル軍がヨルダン川西岸のラマラ自治区に侵攻し、議長府を戦車で包囲、午後までにほぼ制圧した。
議長の執務室付近も銃撃を受けたが、議長は無事だったようだ。
シャロン首相は記者会見で「アラファト議長はテロリスト連合を率いている。同議長を孤立させなければならない」と語った。
議長府を制圧したイスラエル軍は電気や水、電話回線を遮断、議長は事実上監禁状態に置かれている。
72歳の議長がいつまで耐えられるか懸念される。
《「高齢の議長の監禁」について英会話》
「議長は敵」宣言は、イスラエル政府がアラファト議長を和平の交渉相手とする姿勢を完全に捨てたことを意味する。
これは、米国による停戦仲介やアラブ首脳会議が採択した和平案の実現を不可能にするものだ。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
アラブ首脳会議は28日、サウジアラビアのアブドラ皇太子の和平構想を基にした「ベイルート宣言」を採択した。
《「ベイルート宣言採択」に関して英語記事》
同宣言は、イスラエルが67年の第3次中東戦争で占領した地域から撤退し、パレスチナ国家の樹立とパレスチナ難民の帰還を認めれば、アラブ諸国はイスラエルとの国交を正常化するという内容だ。
ブッシュ米政権はこれまで、ジニ米中東担当特使を派遣して、イスラエルとパレスチナの停戦交渉の仲介を続けてきた。
アラブ首脳会議で「ベイルート宣言」が採択されたことで、これを弾みに、ジニ特使の調停で停戦合意にこぎつけるというシナリオを描いたが、イスラエル軍による議長府への攻撃で、そのシナリオも崩壊の瀬戸際に追い込まれた。
[「米国のシナリオ崩壊」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
今回の軍事行動の引き金となったのは、27日にイスラエル北部のネタニヤのホテルで起きた自爆テロだ。
しかし、アラブ諸国には、イスラエルのシャロン政権にそもそも和平の姿勢が見られないとの反発が強まっていた。
〔英会話表現による言い換え〕
シャロン政権は01年3月の発足以来、パレスチナに対し強硬姿勢を貫いてきた。
同年12月にパレスチナ自治政府を「テロ支援体制」と認定、同じ月にアラファト議長との「関係断絶宣言」を表明した。
今年3月10日にはイスラエル軍がガザ自治区の議長府をミサイル攻撃で全壊させた。
<英語論説:シャロン政権の対パレスチナ強硬姿勢>
今回の「敵」宣言と議長府占拠もこの延長線上にあると言ってよい。
30日、イスラエル軍は前日のラマラに続いて、ベイトジャラやヘブロンにも侵攻を開始した。
[「イスラエルの軍事行動拡大」を英会話のトピックとして]
イスラエル政府は今回の軍事作戦に当たって、予備役兵2万人を招集することを決めていた。
自治区の他都市への増派に備えたものと考えられる。
同日、国連安全保障理事会はイスラエル軍の撤退を求める決議案を採択した。
イスラエル寄りとされる米国も賛成に回った。
しかし、決議案の表現がイスラエルに配慮した形で修正されたこともあり、事態収拾への影響力は不透明である。
《「安保理決議案の影響力」について英会話/ディスカッション》
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