14日午後4時過ぎ、米国北東部およびカナダの五大湖周辺で広範囲にわたって停電が発生した。
電力供給の支障は約6000万キロワットと日本の東京電力全体の供給量に近い大規模なものだった。
《「大停電の影響」について英会話》16日昼までにはほぼ復旧した。
この停電で約5千万人が影響を受けた。
主要都市では地下鉄やエレベーターに多くの人々が閉じ込められる被害が出た。
停電が夕方の帰宅ラッシュの時間帯と重なったことから、通勤通学客の足を直撃、大勢の「帰宅難民」が発生した。
<英語表現の工夫:帰宅難民>
1977年にニューヨーク全域で起きた大停電では、略奪が横行し多数の逮捕者が出たが、今回は散発的な被害にとどまり大きな混乱もなく、市民は全体として冷静に対応したようだ。
《「77年のニューヨーク大停電」に関して英語記事》
発生当初は市民の間に様々な憶測や不安が飛び交ったが、市長や州知事の素早い対応が動揺を抑えるのに役立った。
ニューヨーク市のブルームバーグ市長は停電直後にCNNテレビに出演、「テロを示す証拠はない」と市民の不安を打ち消した。
その後も記者会見で詳細な情報を続けざまに市民に提供した。
日没直後にはパタキ州知事が記者会見し非常事態を宣言、続いて市民を激励した。
[「市長や州知事の素早い対応」を英会話/ディスカッションのトピックとして]
直接の原因はまだ不明だが、今回の大停電では、米国の電力供給体制の問題点が浮き彫りになった。
〔英会話表現による言い換え〕
電力の自由化が進む米国では、私営電力会社だけで240社もある。
しかも、発電・送電・配電がそれぞれ別会社という地域が多い。
複数の発電会社が送電線を共同利用するのが当たり前だ。
そのため、1つの発電会社の事故が他にも連鎖的に波及しやすくなっているという。
また、長年放置されてきた送電設備の老朽化も背景として指摘されている。
<英語論説:送電設備の老朽化問題>
クリントン政権時代にエネルギー長官を務めたリチャードソン現ニューメキシコ州知事は「米国は超大国なのに、送電網は発展途上国並のお粗末さ」と批判する。
自由競争の下、コスト削減が優先され、電力会社の送電設備への投資額は減少傾向にあった。
01年暮れのエネルギー大手エンロンの破綻で電力会社の格付けが軒並み下げられ、低利での資金調達が難しくなったため、そうした傾向が一段と進んだとみられる。
《「エンロンの破綻の影響」について英語にて解説》
今回の大停電は日米の電力政策の違いを映し出してもいる。
競争原理を導入し、効率重視で安価な電気を供給する米国とは異なり、停電が最も嫌われるという国民性を背景に、日本の電力会社はコストがかかっても安定供給を重んじている。
[「日米の電力政策の相違」を英会話/ディベートのテーマとして]
電気料金が国際的にみて割高な日本も、電力の自由化を進めている。
<英会話/ディスカッション:日本の電力自由化の動向>
今春まで行われた議論では、新規参入を促すのに必要とされる「発送電分離」が最大の焦点だったが、安定供給の観点から電力業界が強く反対し、1社が発電と送電を一体的に運用する現行の体制は崩さないことになった。
日本は、米国で先行する自由化の負の側面も十分に研究しつつ、電力自由化構想を進める必要がある。
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