5日、宮城県築館町の上高森遺跡で、発掘調査団長を務めた東北旧石器文化研究所の副理事長が、「自分で穴を掘り石器を埋めた」と発掘を捏造していたことを明らかにした。
《「遺跡の発掘」について英会話》
同遺跡は、約60万年前の前期旧石器時代の地層から石器が多数出土したとされて脚光を浴びていた。
副理事長は、9月に北海道新十津川町の総進不動坂遺跡でも同様の捏造工作をしていたことを認めた。
この副理事長はアマチュアの考古学研究者として、東北地方を中心に各地の旧石器遺跡の発掘にかかわってきた。
1981年には宮城県の座散乱木遺跡で、4万数千年前の旧石器を発見し、日本に前期旧石器時代(3万年以上前)は存在しないとの定説を覆し、その後も発掘調査の度に、日本最古記録を更新する石器を発見していった。
<英語論文:旧石器時代研究の動向>
動機について副理事長は「プレッシャーを感じていた」と語っている。
プレッシャーの理由として、発掘のための資金難を指摘する関係者もいる。
[「発掘捏造の背景」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
副理事長らが設立した東北旧石器文化研究所はボランティアのアマチュア考古学団体のため財政基盤が脆弱で、自治体から補助金を受けて活動をしていた。
一方自治体の側には、旧石器発見が呼び起こす「古代へのロマン」を村おこしや町づくりに利用したいという考えがあった。
新たな発見によって世間の注目を集めなければ補助金を得られないということがプレッシャーになったのだろう。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
日本考古学界の閉鎖的な体質に対する批判もある。
《「日本考古学界の体質」に関して英語論説》
副理事長の発見を疑問視する研究者は以前からいたが、少数派で論争も起こらなかったという。
また、国際的な雑誌に研究成果を発表することもせず、内輪だけの議論をしているとの指摘もある。
石器の年代測定の難しさも背景にある。
<英語にて解説:石器の年代測定法>
日本の酸性土壌では、旧石器とともに発見されるはずの遺物が残らないため、年代は石器の形状や埋まっていた地層から推定するほかない。
副理事長が発見した旧石器は、形状の検討が不十分なまま、地層のみが年代確定の決め手になってきたという。
考古学の新発見が新聞やテレビで大々的に取り上げられるようになったのは、1972年の高松塚古墳(奈良県明日香村)の極彩色壁画の発見からだ。
《「高松塚古墳壁画の発見」について英語記事》
以来、考古学の成果をメディアは競って報道してきたが、これは世界的にみても特異なことだ。
今回の事件に対しては、「考古学ブーム」を煽ってきたマスコミの過剰報道を批判する声もある。
マスコミは新発見の発表を、学問的に再検証される前から断定的に報道してきた。
[「新発見に対するマスコミの報道姿勢」を英会話のトピックとして]
そのことが、研究者による異論を封じ込める一因となったのではないか。
副理事長が発掘に関与した遺跡は少なくとも180カ所以上といわれる。
今回の2遺跡以外の発掘調査に対しても疑惑が強まっている。
他の遺跡の再調査の結果によっては、日本の前期旧石器時代研究は根本から見直しを迫られることになりそうだ。
<英会話/ディスカッション:旧石器研究の今後の課題>
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