諫早湾干拓事業の工事差し止めを命じた佐賀地裁の仮処分決定を不服として農林水産省が申し立てた抗告審で、福岡高裁は16日、同省の保全抗告を認め、工事差し止めを取り消した。
<英語にて解説:仮処分、保全抗告>
高裁は、「干拓工事と有明海の漁業環境の悪化との関連性は否定できないが、明らかとまでは言えない」とした上で、「工事を差し止めるには事柄の性質上、一般に比べて高い証明が必要」と、原告の漁業者側に厳しい立証責任を求めた。
《「高いハードル設定」について英会話》
決定は、公共事業の差し止めの難しさを改めて示した格好だ。
行政が公共の利益のために判断し、政治が民主的な手続きで進めるのだから、司法の判断は慎重にすべきだとの考えが一般的に根強い。
一方、高裁は「九州農政局は中・長期の開門調査を含めた有明海の漁業環境の悪化に対する調査、研究を実施すべき責務を負っている」と述べた。
<英会話/ディスカッション:開門調査の必要性>
また、事業に2460億円という巨費を投じながら、干拓地で見込まれる年間の農業生産額は2%にも満たない45億円に過ぎないと指摘、費用対効果の面からも、調査の必要性は大きいとしている。
諫早湾干拓事業は、農水省が89年に農地造成と防災対策を目的に着工した。
97年に潮受け堤防で湾奥部を閉め切ったが、干潟が消滅し、全国的に批判された。
00年12月には有明海で養殖ノリ不作が深刻化し、干拓の影響を指摘する声が高まった。
《「有明海のノリ不作」に関して英語記事》
01年8月に有識者による事業再評価委員会が「事業見直し」を答申すると、農水省は10月、事業縮小を提示。
12月には有識者によるノリ不作等第三者委員会が「短・中・長期の開門調査」を提言したが、農水省は翌年4月に短期開門調査のみ実施した。
[「提言に対する農水省の対応」を英会話のトピックとして]
このため、11月に沿岸漁業者らが工事差し止めを求めて佐賀地裁に提訴、仮処分申請にも踏み切った。
《「諫早干拓を巡る住民の動き」について英語にて解説》
03年12月、農水省が設置した官僚OBによる「中・長期開門調査検討会議」が「開門調査は困難」と報告。
これを受けて昨年5月に農水相は中・長期開門調査の見送りを表明した。
昨年8月、佐賀地裁が工事差し止めの仮処分を決定した。
この決定では、干拓工事と漁業被害の因果関係の証明は「一般的に疑われるという程度で十分」と、漁業者側の立証のハードルを下げて差し止めを認めた。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
工事は即時中断、すべての契約も解除された。
高裁の決定を受け、漁業者側弁護団は最高裁への抗告を断念する一方、農水省に閉め切った潮受け堤防の水門の開門を求める行政訴訟を、佐賀地裁に起こす方針を決めた。
[「最高裁への抗告断念」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
裁判とは別に、工事と漁業被害の因果関係を専門的な立場から調べている公害等調整委員会の裁定結果にも望みを託す。
農水省は近く工事再開に向けた準備に入る。
事業の進捗率は03年度末で94%(事業費ベース)、06年度末の完成を目指す。
また、高裁が国の「責務」と指摘した中・長期開門調査は実施しない方針だ。
《「工事完成を急ぐ農水省」に関して英会話/ディベート》
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