フランスのドビルパン首相は10日、若者向けの雇用策「初期雇用契約」(CPE)を撤回すると発表した。
野党や労働組合、学生団体は「勝利」を宣言、3カ月近くに及んだ大学封鎖やデモ、ストは収拾に向かう見通しだ。
《「CPEを巡る経緯」に関して英語記事》
首相は「CPEはすべての国民には理解されなかった」と事実上の「敗北」宣言をした上で、CPEを規定した機会平等法第8条を別の雇用促進策に差し替えることを表明した。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
代替案について、AFP通信は低学歴や移民社会の若者の就職支援策になると報じている。
フランスの若者の失業率は、15%前後のドイツや13%前後のイギリスよりもはるかに高く、20%を超える。
多くの若者は「有期雇用契約(CDD)」と呼ばれる短期雇用で就職し、半年ごとの契約更新など雇用が不安定な状況にある。
<英語にて解説:仏の雇用契約>
26歳未満の労働者を雇った場合、企業は最初の2年間を試用期間とし、この間は理由を示さずに解雇できるというのがCPEの主な内容だ。
現行制度は労働者保護が手厚すぎて、企業は若者の採用に二の足を踏むのが現状だ。
[「労働者の過剰な保護」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
CPEの狙いは解雇しやすくすることで企業の採用意欲を高め、雇用機会を拡大することにあった。
ドビルパン首相は1月、若年失業対策としてCPEを打ち出した。
背景には、昨秋の移民系若者による郊外暴動があるといわれる。
「自分たちに不利な制度」としてCPEに反発する一部の学生の運動はあっという間に仏全土に広がり、労組は交通機関、電力、学校、放送まで巻き込んだゼネストを実施。
3月28日と4月4日には、警察発表で100万人、主催者発表で300万人とされる大規模デモが繰り広げられた。
《「超大型デモ」について英会話》
フランスでは過去にも、雇用や年金など生活に響く改革が若者や労組のデモやストでつぶされている。
〔英会話表現による言い換え〕
94年、バラデュール首相は若者向けの最低賃金引き下げを撤回、95年にはジュペ首相が公務員の社会保障改革を先送りしている。
若者や労働者が街頭で政治主張を叫ぶ「街角パワー」は今回も健在だった。
[「街頭民主主義」を英会話のトピックとして]
フランス革命以来の伝統とはいえ、国民を代表する議会で成立した法律が街頭運動によって簡単に覆される事態に、英米系の一部メディアでは眉をひそめる向きもある。
CPEの撤回で、硬直的な労働市場の柔軟化を目指したフランスの雇用改革は頓挫した。
自由化路線が定着した英国や、昨年来、構造改革を推進しているドイツと比べ、この国の改革の難しさを改めて印象付けた。
<英語論説:仏の市場主義アレルギー>
産業界では経済のグローバル化から取り残されるとの懸念も強い。
CPEの導入に政治生命をかけたドビルパン首相は深手を負った。
最新の世論調査では首相の支持率は25%まで低下、来年の大統領選レースからは脱落したとの見方が広がっている。
反対に、首相に代わって学生や労組との調整役を務めた与党、国民運動連合(UMP)のサルコジ党首(内相)の力は強まりそうだ。
《「大統領選への影響」に関して英会話/ディスカッション》
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