英国のトニー・ブレア首相は10日、与党・労働党の党首を辞任し、6月27日に首相を退陣すると正式に表明した。
97年5月、英国で1812年以来最も若い43歳で首相に就任してから10年、サッチャー保守党政権に次ぐ長期政権となった「ブレア時代」が幕を閉じる。
《「ブレア首相の鮮烈デビュー」について英会話》
政権発足後には70%を超した支持率が最近は20%台に低迷していた。
労働党への支持率も歴史的な低水準にある。
最近では党の不正資金調達疑惑も浮上した。
一方、05年末に就任したキャメロン党首の下で中道政党への脱皮を急ぐ野党・保守党は人気が急回復。
<英語記事:保守党の支持率再上昇>
09年予定の次期総選挙での政権交代が現実味を帯びてきている。
ブレア政権は労働党政権でありながらサッチャー改革の基本路線を継承した。
[「サッチャー改革の功罪」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
発足直後には中央銀行の財務省からの独立を断行し、金融サービス機構を創設した。
労働党政権に対して懐疑的だった金融街シティーも「ニューレーバー」を信頼した。
03年に通貨ユーロの導入を見送り独自の道を歩んだが、ロンドンには欧州大陸から多くの資本と人材が集まった。
英国経済は長期にわたる景気拡大を続け、経済成長率は最低でも1.9%、失業率は5%前後で安定した。
<英会話:経済成長の陰で拡大した格差>
英国の好況持続の背景には、海外からの資本を積極的に受け入れ、グローバルな金融拠点として機能していることがある。
しかし、最近は中東やロシアからのオイルマネーの流入で都市部の不動産価格が高騰し、資産バブルの懸念も強まっている。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
政権が打ち出した「第3の道」は市場重視と福祉の両立を目指す政策理念で、他の国々にも影響を与えた。
フランスは先の大統領選挙で、手厚い社会保障に慣れた国民がサルコジ氏の唱える競争による改革を支持した。
<英語にて解説:サルコジ氏勝利の背景>
高度福祉国家スウェーデンでは市場重視を掲げる右派政権が誕生している。
ブッシュ米大統領と行動をともにしたイラク戦争は結果的には政権の挫折につながった。
イラク情勢の泥沼化が続く中、駐留英軍に多数の死者が出ていることや、大量破壊兵器を巡る世論誘導や情報操作が明らかになり、国民の怒りを買った。
《「世論誘導疑惑」に関して英語記事》
ブレア首相は米英関係をテコにした「米欧の架け橋」としての役割を果たそうとしたが、イラク戦争では仏独と対立し、欧州内や米欧間の亀裂を埋めきることはできなかった。
イラク戦争の大義とされた大量破壊兵器は見つからず、国内では対米追従外交を批判され、「ブッシュのプードル犬」と揶揄された。
〔英会話表現による言い換え〕
後継首相にはブレア政権で経済政策のかじを取ってきたブラウン財務相が就任する公算が大きい。
ブラウン氏は外交や経済運営などで現政権の路線を踏襲するとみられるが、まず直面する課題は不慣れな外交だ。
とりわけイラク問題を解決するため、良好な米英関係を維持しつつ、どう独自色を出すかが最大の焦点となるだろう。
《「対米関係の手直し」に関して英会話/ディスカッション》
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