イラク高等法廷は5日、1980年代前半に起きたイスラム教シーア派住民の虐殺事件で起訴されたサダム・フセイン元大統領(69)ら8被告の判決公判を開き、フセイン被告に「人道に対する罪」で求刑通り死刑を言い渡した。
[「人道に対する罪」を英会話のトピックとして]
虐殺事件が起きたのは82年。
イラク中部ドジャイル村を訪問した当時のフセイン大統領の車列が銃撃され、治安当局は大統領暗殺未遂と判断。
反政府色の濃かったシーア派の村民が拷問され、148人が処刑された。
残りの住民も多くが砂漠地帯に強制移住させられた。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
イラク戦争後の03年12月、旧政権の犯罪を裁くため、米英主導の連合国暫定当局(CPA)の指揮下でイラク特別法廷が設置された。
05年に名称をイラク高等法廷に変更。
《「イラク高等法廷の問題点」に関して英語論説》
同法廷は二審制で、死刑や終身刑の判決が出た場合は自動的に控訴される。
刑は確定後30日以内に執行される。
ただ、フセイン被告は「アンファル作戦」と呼ばれる80年代のクルド系住民虐殺事件でも公判中。
さらに10件前後の起訴事実で裁判にかけられる見通しだ。
<英語記事:フセイン元大統領の裁判>
イラク当局はフセイン被告の残虐さを強調するために、全ての事件の審理が終結するまで確定した刑の執行を控える方針を示してきた。
5月に発足したイラクのマリキ政権は、今回の判決でフセイン体制との決別を印象付け、旧政権を支持する武装勢力の活動の沈静化につなげたい意向だ。
しかし、現在のイラクの治安悪化の主因は宗派間抗争である。
《「宗派抗争の背景」について英語にて解説》
フセイン判決を機に、旧政権の基盤だったイスラム教スンニ派と現政権を主導するシーア派との宗派対立に拍車がかかる可能性もある。
裁判の正当性への疑問もくすぶる。
高等法廷はイラクの国内法に基づいて裁判を行うが、米国が設立資金を提供し、英国などで研修を実施した。
[「裁判の正当性」を英会話/ディベートのテーマとして]
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「裁判は不公平だった」と指摘。
控訴審での独立した国際裁判官の導入やイラク国外での裁判の必要性を訴えている。
ブッシュ米大統領は5日、「裁判は独裁国家を法治国家に作りかえるイラク国民の取り組みの重要な節目」と高等法廷による判決を高く評価。
〔英会話表現による言い換え〕
ライス国務長官も「法の支配が恐怖支配に勝利することを全てのイラク人に思い起こさせた」との声明を発表した。
イラク情勢の泥沼化で米国内ではブッシュ政権に対する批判が強まっている。
<英語表現の工夫:泥沼化>
7日投票の中間選挙で劣勢が伝えられる大統領の共和党陣営は、今回の判決を「イラク民主化の成果」とアピールすることで、中間選挙での巻き返しを期待している。
フセイン元大統領の死刑判決について、英国は歓迎する立場を表明する一方、フランスは「イラクに新たな緊張を生まないように望む」と宗派抗争の激化に懸念を示した。
《「EUにおける死刑への異論」に関して英会話/ディスカッション》
また、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスは「裁判は米国の占領下で行われ、公正ではなかった」と批判した。
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