29日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)対策をめぐり東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の緊急首脳会議がタイのバンコクで開かれた。
中国の温家宝首相は初動での不手際を認め、SARS封じ込めに積極的に協力することを約束した。
《「初動での不手際」について英語表現の工夫》
SARSは新型のコロナウイルスが原因とされ、38度以上の高熱やせき、呼吸困難などが主な症状である。
<英語にて解説:コロナウイルスの特徴>
空気感染ではなく飛沫感染によって広がり、感染して2日から10日で発病する。現在、有効な治療薬はまだない。
SARSの感染は、02年11月に中国の広東省で発症した例が最初といわれる。
今年2月下旬には発病した中国系米国人男性がベトナムのハノイの病院に入院し、この患者の処置に当たった病院スタッフに感染が広がった。
[「医療従事者への感染」を英会話のトピックとして]
同じころ、SARSに感染していた広東省の医師が香港のホテルに滞在し、同じホテルに宿泊していた人々を通じて香港、ベトナム、シンガポール、カナダなど世界中へ感染が拡大した。
中国政府が世界保健機関(WHO)に最初の報告を行ったのは、発生から3ヶ月も経過した2月であった。
《「中国政府のWHOへの報告の遅れ」に関して英会話/ディスカッション》
3月中旬、香港の病院での集団発生の報告を受けて、WHOはSARSの情報を世界に発信し始めた。
3月15日には、旅行者に注意喚起する異例の緊急勧告がWHOによって発表された。
<英語記事:WHOの緊急旅行勧告>
当時致死率は2%程度で脅威度は低かったが、感染者が航空機で移動すれば病原体があっという間に世界に広がりかねないことを重く見て、情報伝達を最優先した結果だった。
3月下旬には中国政府の「患者隠し」が明らかになり、国際的な非難を浴びた。
北京市内の軍病院には未公表の多数の患者が入院しているとの内部告発があり、中国入りしたWHOの専門家チームの調査により、情報隠匿が事実だったことが判明した。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
中国当局が情報を出し渋っている間、口コミによって恐怖が市民の間に広がった。
《「口コミによる恐怖の拡大」について英会話》
広東省では、外資系企業の社員とその家族が相次いで出国し、香港でも人々の不安や動揺が深刻なものになっていった。
4月も中ごろになると中国政府は、国際的な批判に加えて、海外からの投資への影響を懸念したためか、遅ればせながら方針を転換し、4月20日には、北京市の感染者数を大幅に上方修正すると同時に、衛生相と北京市長を更迭した。
〔英会話用の口語文体で言い換え〕
今回の情報隠しの背景には、高度経済成長の維持を至上命題とする中国の安定と発展にとって、SARSの発生源と見られることはマイナスに働くとの判断があったのかもしれない。
[「中国の情報隠蔽の背景」を英会話/ディスカッションのテーマとして]
しかし、人もモノも容易に国境を越えるグローバル化が進み、感染症も一夜にして世界に広がる時代である。
<英語論説:グローバル化時代の感染症>
最初の患者が見つかった中国が、感染情報を隠蔽したことが世界的な感染拡大をもたらしたことは明らかだ。
中国政府の責任は重いとしか言いようがない。
|